人間との暮らし方① 猫についてもっと知ろう

第2章 人間との暮らし方

1. 猫についてもっと知ろう

私たち猫は、人間から見ればマイペースで自由気ままで、気まぐれな奴だと言われますが、それは、あながち間違いではないでしょう。仕方ありません、認めましょう(笑)
でもこれは性格が悪いということではなく、私たち猫がもともと単独で行動する動物の名残りを持ち合わせているからです。
すべてを自分ひとりで処理しながら、誰のためでもない、自分のために責任を持ちながら暮らしてきた歴史があるのです。犬などと違って、リーダーに対する服従心なんかもありません。自分勝手と言われようと、飼い主さんの命令を聞かないと叱られようと、単独生活者としては当然の性格なのです。

ではなぜ単独生活者である私たち猫が、人間になついたのでしょうか?
これは人間に飼われた猫は、多かれ少なかれ「子猫の気分」を持ち続けているからだと言われています。
単独生活者といえども、子猫のときは母猫や兄弟や仲間と暮らしています。猫が単独行動をする一番の理由は食糧を確実に得るためです。肉食動物である私たち猫の場合、大勢で暮らすことで獲物になる小動物を捕り尽くしてしまうと、誰も生き延びることができません。ゆえに大人になるにつれ単独行動になっていくのです。しかし、現代の飼い猫は食糧の心配をすることなく、母猫の代わりに飼い主さんが身の回りの世話をしてくれるため、子猫気分のまま大人になる猫が増えたのです。

愛猫家のなかには、私たち猫の奴隷にさえなってくれる人間がいるという噂も聞きます。その結果、私たち猫は人間になついていると思われるようになったのでしょう。
本来、人間の用途に合わせて作り出された犬と違って、ネズミ退治以外の働きを求められなかった私たち猫は、品種改良の歴史も浅く、今なお野生の頃の性格が色濃く残っているのが特徴です。
人間に飼われたからって、食糧が潤沢だからって、心まで売るような安っぽい生き物ではありません。あなたたち人間から見ると私たちを「飼っている」と思うことでしょうが、そもそも私たち猫が人間をコントロールしているということを人間は知らないのです。

ここで重大発表があります。
実は、私たち猫の世界では、あなたたち人間のことを「人間」と思ってはいません。どういうことかと言うと、あなたたちは私たちと同じ猫の種類のひとつで「無駄にでかい猫」と考えているのです。
隣に座る、スリスリする、尻尾を立てる、カラダを舐めるなど猫同士で行うことを人間に対して行っても、私たちからすると同じ猫ですからなんら不自然ではありません。
とは言え、私たち猫は人間と暮らしていると言っても現実的には人間と全く違う世界に生きていると言えます。
例えば人間は、猫は「ニャー」と鳴くものだと思っていますが、猫同士ではニャーニャー鳴いて会話したりしません。私たち猫の世界では仕草や行動で意思疎通を試みますが、人間には猫の微妙な仕草を感じ取る能力はないようなのです。
でもあるとき猫は気づいたんですね。
人間は猫みたいに物音を聞き分けたりできないけど、ニャーと鳴けばこいつら振り向くんだって(笑)。
その日以来、猫は人間だけにニャーと話しかけるようになったんです。お互いうまくやっていくために異なる世界観の重なる部分だけを分かち合っていると言っても良いかもしれません。
時に人間は私たち猫のことを不可解な生き物だと考えることもあるようですが、それは私たち猫が人間には気づかない物事を感じることができる能力を持っているからです。
だからと言って、あなたたち人間のことを私たちより劣る馬鹿な猫だとは思っていません。人間はカラダが大きいわりに不器用ではありますが、知能は高い猫だと感じています。
私たち猫は、自分より劣る生き物にすり寄ったりはしない動物なので、あなたにスリスリ
していたらそれはあなたをバカにしていない証拠です。バカにはしていないけれど、ストレスのない、より良い生活環境を飼い主さんから与えてもらえるように、これからも飼い主さんへの教育は重要なことだと思っています。

これからも私たち猫は人間と共に暮らしていくことでしょう。
人間からすると、ひとたび私たち猫と一緒に暮らし始めると、もう私たち猫のいない生活は考えられないと感じることもあるとの報告も受けます。
実際ペットとして、犬に比べて私たち猫は手がかからない生き物と言えるでしょう。一緒に暮らすのに訓練など必要ないし、一日中放っておいても自分で毛づくろいをしたり、食べたいときに食べて寝たいときに寝る。ひとりで居ても飼い主さんを恋しがることもない。人間に媚びず、出しゃばることもしないし、かと言って愛情を向けられるとそれなりに嬉しがる。
そんな私たち猫の自由な暮らしに人間たちは魅了されているのでしょう。
現在の人間の世界では、猫の飼育頭数は犬の飼育頭数を超えたとの話もあります。猫と人間との関わり方を勉強することは、間違いなくお互いのシアワセにつながってゆくのです。

 

2. 猫と飼い主

これは猫の中でも私が勝手に思っていることかも知れないけど、私たち猫が人間になつくのは「愛情」を持っているからだと思うんです。
これはね、もちろん学術的な話ではないけれど、何となくそう思うのです。私が人間に飼われた経験談ですかね(笑)。

私たち猫がペット化に成功したのは、人間に好かれるように進化したからだと言われています。つまりどういうことかと言うと、私たち猫はめちゃくちゃカワイイってことですよね(笑)
人間の意見で猫を好きな理由の第1位はツンデレの性格をあげる人が多いんだそうです。私たち猫はマイペースで自由奔放なわりに、急に近寄って甘えたり、そばに座ってみたり、猫の天性とも言える独特の距離感に心を奪われる人が多いと聞きます。私たち猫から見ると意識して行動してることじゃないんだけどね。

先ほど私たち猫は人間をデカい猫と思っているという話をしましたが、それに気づいてくれたのが動物学者のジョン・ブラッドショーという博士なんだけど、彼は「猫は犬と違い、人間を人間として捉えていない」と言っています。
犬が人間と遊ぶときは犬同士での遊び方とは全く違うのに対し、猫は人間と遊んでいるときも猫パンチと、猫キックを繰り出し、猫同士で遊ぶときと同じ遊び方をするという事に気づいたんですね。
つまり猫は人間と対等な関係でコミュニーションしているのです。それでも「猫は人間を愛してるフリをしてるだけだ」という人もいます。猫に「愛」という感情はないと断言する人もいます。
※イラスト/しげるさん(イラストAC)

ここから先は私の友猫の話だけど、彼にはお気に入りの人間が二人いたんだって。
その人間たちは夫婦なんだけど、彼の愛情の対象は旦那さん。
彼は窓のそばのいつもの席で毎日旦那さんが車で帰ってくるのを待っていた。
車が帰ってくるのを見ると、たとえ雨の日でも車のそばへ走って行って旦那さんが車のドアを開けるのを待って、ドアが開くやいなや車の中の旦那さんに喉を鳴らしながら飛びついてはスリスリ顔をこすりつけていたんだって。
この行動は、ごはんをくれるからとか、食べ物が動機になっているわけではなく、むしろ奥さんの方がいつもごはんを用意してくれていたのに、彼は奥さんにはそういう行動をとったことがなかったらしい。
彼はどうしてこんなキモチになるのかわからなかった。
でも私は、旦那さんのそばにいる彼を見たことがあるんだけど、心からシアワセを感じているのをハッキリと見て取れたのよ。彼はきっと、飼い主さんに「愛情」を抱いていたに違いない。

猫は他の猫に愛情を感じる能力があることが人間界の研究では判明しているそうです。
だとすれば、人間のことを同族のデカい猫だと思っている私たちが、人間に愛情を抱くことは何ら不思議はないですよね。
私たち猫にクールなイメージを持つのは自由だけれど、そんな私たち猫が人間になつくのは感情的な要素もあると私は考えるわけです。
もちろん世の中の猫すべてが愛情というキモチを理解しているとは言いませんが。

飼い主さん、こんな風に考える猫も世の中にはいるのです。
すべての猫が同じ感情を持つとは限らないのです。まさに十猫十色なのです。
私たち猫は人間とコミュケーションを取る際にニャーと鳴きますが、飼い主さんは気づいていると思います。私たち猫のニャーには、「怒った」ニャーや「甘えてる」ニャーがあることを。
そのニャーは、人間にだけ向けられた、私たち猫の感情的要素が詰まっていることもあなたはご存知なはずです。
今後は私たち猫のニャーにもっと耳を澄ましてください。
時には声にならない声で伝えたいこともあります。(サイレントニャー)そこにはあなたたち飼い主さんが、思いもよらなかった愛情が見えるかも知れません。
ある程度の猫語を理解してこそ、私たち猫が望むステキな猫の飼い主と言えるのです。