猫の基礎知識

第1章 猫の基礎知識

1. 猫の教科書について

「カワイイだけが、ぜんぶじゃない」
猫を愛する皆さん、こんにちは。はじめましてmomoです。
本名は桃太郎でオスの14歳。人間でいえば70歳くらいになる見た目は若い老猫です。

それにしても、自分で言うのもなんですが、私たち猫はカワイイです。
でも私たち猫だって人間と同じように体調を崩したり、やがて年も取ります。カワイイだけでは済まされない場面も猫生の中には何度も訪れます。
最近、「猫を飼っているのに猫のことを知らない飼い主さんが多すぎる」という猫の苦情が増えているのですが、愛猫のキモチに気づけなかったばっかりに、無駄なストレスを抱えて体調を崩したり病気になったりしてしまう猫たちも多く、ここのままでは人間との豊かなシェアハウス生活に亀裂が生じるかもしれないと危惧しているのです。
そこで、僕は飼育レベルの高い飼い主さんの育成のため、猫を愛するすべての飼い主さんへ向けて、私たち猫から見た猫目線で「猫の教科書」を書くことにしたのです。
「猫の教科書」は、猫の生態といった基礎知識から、医療や介護、食育など、専門的な知識まで充実した内容になっており、医療に関してはちゃんと獣医師さんに監修を仰ぎました。

「猫の教科書」は僕の最初で最後の作品になると思います。
だから拙い人間語ではありますが、猫のキモチをできるだけ正確に伝えておきたいと思います。
「猫は自分を映す鏡であり、猫を学ぶことは自分自身を学ぶことである」という言葉があるように(あったと思います)「猫の教科書」で猫を学び、猫を深く理解し、猫に寄り添える飼い主さんが増えてほしいというのが僕の願いです。

それでは早速今日から猫の教科書で猫を学んでいきましょう!
まずは猫の基礎知識から学習を始めましょう!

2. 猫のはじまり

さて、まずはじめに猫の歴史を少しだけ勉強しましょう。
私たち猫が人間と暮らすようになったのは、これはもう大昔のことだから諸説あるのですが、一般的には今から4千~6千年前の古代エジプト時代と言われています。
もともとは、犬や猫などの哺乳類の先祖とされる「ミキアス」と呼ばれる豹のような大きな動物が起源で、そこからネコ類の祖先とされる「リビアヤマネコ」が出現して、だんだん人間に慣れて家畜化されていったのがイエネコの始まりとされています。

でも家畜化と言っても、古代エジプトでは私たち猫はネズミから畑を守ったり、毒蛇を退治したことで神として崇められていたのです。 頭が猫で体が人間という「バステト」という女神がいたのがその証拠。
私たち猫が、つい高貴なイメージを醸し出してしまうのにはこんな理由があったんですね。
さらに、猫の命を奪ったものには死刑という重い罰まであったと言われています。私からすると、まぁ当然の罰だと思いますね(笑)

その後、貿易商たちが船内のネズミ退治のために猫を船に乗せて世界各地に運ばれて行きその土地特有の風貌や性格を持った猫が生まれていきました。
日本には仏教が伝えられた飛鳥時代から奈良時代にかけて中国から運ばれたと考えられていますが、これも諸説あります。
その後、鎖国などによって外から猫が入ってくることがなくなり、日本独特の「和猫」が誕生したと言われています。
日本には猫にまつわる伝説も数多く残されていますが、中には老いた猫が若い娘を食い殺してその姿に化ける「化け猫」といった、私たち猫が呪いや祟りなどの対象にされていたりしますが、もちろんすべてデタラメです。
神だったり化け猫だったり、勝手に人間が私たち猫につけたイメージですが、それだけ神秘的な魅力を感じているということなのでしょう。

 

3. カラダの仕組み

基本的に単独で獲物を捕らえるハンターとして進化してきた私たちのカラダは、柔軟な筋肉と鋭敏な感覚器を兼ね備えています。
現代社会でのライフスタイルは変化したものの、野生の名残りを多くとどめています。

ご存知の通り、私たち猫の目は暗闇でもよく見えます。人間の目と比べて7分の1の光量でも十分と言われており、網膜の後ろにあるタペータム(輝板)と呼ばれる反射板の働きで、わずかな光を2倍くらいにして網膜に返すことで、暗いところでも鮮明に見えるようになっているのです。
ちなみに、視力は人間の10分の1程度しかありません。そんな視力の弱さを補うために、私たち猫の目は動くものに敏感に反応するようになっています。

私たち猫の聴覚は、「犬の2倍」で「人間の8倍」と言われ、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の中でもっとも優れています。
って、自分でもよく聴こえるなとは思ってましたが、そんなにすごかったとはオドロキです⁉(笑)その聴力の高さがネズミの声や動く音、気配を感じ取って狩りに役立つというわけですよ。
たまに私たち猫がボーっと天井の隅あたりを見ていると、人間は「そこに幽霊がいて猫には見えているんだ!」なんてことを言ったりしますが、ただ耳を立てて集中して「音」を聴いているだけです。

私たち猫の舌はザラザラした糸状乳頭と呼ばれる突起があります。骨から肉をそぎ落とすときに便利な肉食動物ならではの機能です。その他、舌は水を飲んだり毛繕いをしたりする時など、とても器用に働きます。

味覚を感じる味蕾(みらい)と呼ばれる突起も500個程あるので私たちも味を感じることができますが、人間の味蕾の数は約1万個と言われていますので、私たち猫の舌は人間ほど敏感ではないようです。
肉食に特化して生きてきた私たち猫は、甘味は感じないので甘いお菓子は犬と違って興味がありません。ただし全猫がそうだというわけではなく、僕なんかは生クリームが好きでスイーツキャットなんて呼ばれてます。猫にも個体差はあります。
そのほか酸味、苦味、塩辛さは感じますが、中でも肉が腐っているかを判断するために酸味を感じる味覚は発達してると言われています。

私たち猫の嗅覚は、人間の数十倍から数万倍と言われています。犬には劣るものの匂いによって多くの情報を収集します。
縄張りを匂いで把握したり、仲間の性別や年齢や発情期のメスの存在なども匂いから知ることができます。

私たち猫の肢はとても器用なことで知られています。
前肢は物を掴む、握る、ごはんを食べる、水を飲む、危険かどうか確かめる、身体の隅々までグルーミングするなど多機能にわたります。
ご存じとは思いますが、後肢は発達した筋肉と柔らかい関節と頑丈な骨が卓越した跳躍力と瞬発力を生み出します。これはけっこう自慢できます(笑)
肢の筋肉は「速く収縮し疲れにくい」細胞が多いので短距離走が得意ですが、長距離は苦手です。
一方、別の「ゆっくり収縮して疲れにくい」筋肉も持っているので、長時間かがみ続けて一気に獲物にとびかかることもできるのです。
また、私たち猫のトレードマークであるプニプニとした肉球は柔らかく、高いところからジャンプしたときに衝撃を吸収するクッションの役割や、消音、滑り止め、マーキングなどの役割を担っています。

私たち猫の爪は普段は引っ込んでいて、必要に応じて自由に出し入れできます。爪は何層にも重なっていて、爪とぎによって外側の古くなったサヤが剥がれて、新しい爪が出現します。
ご存じの通り爪切りはキライです。

ヒゲ

普段何気なく使っている私たち猫のヒゲですが、実は非常に重要な役割を担っています。
ヒゲの根元には外界の変化を敏感に感知するセンサーが豊富に存在し、血液で満たされた「環状洞」と呼ばれる部分は、わずかなヒゲの振動も増幅して近くに分布している知覚神経へ信号を伝える役割を持ちます。つまり、障害物や獲物に近づくと空気の流れが乱れ、その変化をヒゲのセンサーが感
じとるので、私たち猫は暗闇の中でもぶつからないように歩けるし、獲物のいる方向を確認できたりするわけです。
また、大きくジャンプする前も、風速と風向きをヒゲで感じ取っています。私たち猫の平衡感覚はヒゲによって保たれているといっても過言ではありません。さらに狭い所を通る時にはヒゲをいっぱいに広げ、顔を入れてヒゲが通るようなら体も通ることができると判断しているのもこれらセンサーの
おかげです。

4. 猫の一生

私たち猫は生後1年で大人になり、快適な環境で暮らしていれば1 5 年ほど生きると言われています。最近では室内飼育の普及やフードの改良などで20歳を超える猫も増えてきました。

<新生時期>生後1~2週
嗅覚で母猫のおっぱいを探し出して前肢でおっぱいを交互に踏みながら飲みます。自力で排泄できないので母猫がおしりを舐めて排泄を促します。この時期に目も開いてきます。

<第一次社会化期>2週~3ヶ月
子猫同士でじゃれあう時期。約1ヶ月で歯が生え揃い母親の助けなしで排泄もできる
ようになります。
母猫はこの頃から授乳を嫌がるようになり、子猫も離乳食を食べられるようになりま
す。人間に飼われている場合は1度目のワクチン接種のころで、ちょっぴり嫌な思いを
しますが心配いりません。

<第二次社会化期>3~6ヶ月
永久歯に生え変わり、メスは6ヶ月ころから発情が来ます。人間に飼われている場合
は2度目のワクチン接種があるでしょう。

<青年期>6ヶ月~1年
母猫から離れて自分の縄張りを持つようになる頃です。生後1年で人の12~15歳くら
いに成長します。

<成年期>1年~9年
2~3歳くらいまでは非常に活発に過ごしますが、5歳くらいから行動に落ち着きが出
てきます。

<高齢期>9年~
老化は10歳ころから始まります。寝ている時間が多くなり、足腰も衰えて運動量が少
なくなってきます。


※イラスト/しげるさん(イラストAC)